人体のしくみー精と神

前回、

体を構成し動かしている気血津液は、父母からもらった「先天の精」と呼ばれる生命力を基礎とし、胃腸で消化吸収した飲食物(水穀の精微)から取り出された「後天の気」と呼ばれる栄養や、呼吸によって吸込んだ「清気」よって補充されます。

と、書きました。


この気血津液が作られ、補充されるためには、臓腑の働きが必要です。

その臓腑とは、肝・心・心包・脾・肺・腎の臓と、胆・小腸・三焦・胃・大腸・膀胱の腑です。

これら臓腑は五行説のお話のときに出てきた、木火土金水に配当されます。

木=肝、胆

心=心・心包、小腸・三焦

土=脾、胃

金=肺、大腸

水=腎、膀胱

詳しくはそれぞれの臓腑を取り上げた時にお話しますが、このように配当されているということをざっくりと頭に入れてお読みください。


さて、これらの臓腑が働くためには「精気」が必要となります。

精気も気の仲間ですが、精気がなければ気も作られないくらい、人間が生命活動を行う上で重要なものです。


まず生命は両親から先天の精をもらうことによって始まります。

この先天の精は、腎に貯蔵されます。

水は固める力を持っているため、目的をもち、物事を継続的に実行させる精気、つまり「志」となります。

腎は一番最後に充実する臓で、一定の年齢が来ると減ってきます。

親からたくさんの先天の精をもらってこなかった、勉強や習い事やゲームなどが多すぎて消耗し過ぎた、夜きちんと寝ていない、食生活が不規則…など、先天の精、後天の精が不足すると充実しません。

すると「志」という精気が少ないために、フワフワと浮かれていて、落ち着いて何かに取り組むということができなくなるのです。


精気の中でもっとも重要な役割をしているのが、心に貯蔵されている精気です。

生命現象そのものであり、生体の活動すべてを支配している「神」です。

精気=心の精気=「神」

と思っていただいて大丈夫です。

つまり、心がしっかり命令を出すことにより、他の肝・脾・肺・腎、胆・小腸・三焦・胃・大腸・膀胱が活動できるのです。

心に何かあってはまずいので、心包という部下が守っています。

心に関わる症状がみられる時は、心包の症状であることが多いです。

しかし、心が貯蔵している精気「神」が減ってしまうと、精神不安定な状態、錯乱、意識不明な状態などが起こり、ひどい時は死んでしまいます。

腎が貯蔵している「志」は「神」が暴走して減らないようにバランスをとっています。「志」の減り具合が著しいと、「神」もあやしくなってきます。


飲食物を消化吸収し、気血津液を作り出す原動力となるのは、脾が貯蔵している「意」と「智」という精気です。

物事を生み出す、記憶力、思考力に関係している精気です。

ですので、考え事をし過ぎると「意」と「智」が消耗し、脾の働きが悪くなるため、食欲が落ちるのです。

なかなか食事のすすまないお子さん、お箸とお茶椀持ったままボーっと空想にふけっていることはありませんか?


血を蓄えている肝は、「魂」という精気を貯蔵しています。

「魂」には積極的、計画的な働きがあります。

肝が蓄えている血を四肢に送り出す、発散する力を生みだすとても力強い精気です。

「云」という文字が付いていることから、死後、肉体を離れて浮遊した後、天に昇る陽性の霊をさします。

肝にたっぷりと血が蓄えられなくなると、「魂」が衰え、自己の信頼感が薄れて自信がなくなります。

目や脳、筋肉を使い過ぎて血が足りなくなってくると、「魂」が傷つき、現実と非現実の識別ができなくなり、狂気を起こします。ゲームのし過ぎてキレる子、というのは、このパターンですね。


気をつかさどる肺には、「魄」という精気が貯蔵されています。

「魄」もたましいなのですが、これは「白」という文字がついていることから、死後、「魂」が昇った後の骸骨(白骨)を意味し、土に還ることから陰性の霊をさします。

本能や肉体と密接な関係をもち、赤ちゃんがお乳を飲むときの本能行動や、痛みやかゆみなどの感覚をもたらしたり、注意を集中させたりする精気です。

呼吸も無意識にしていますよね。

肺の精気である「魄」が減ると、注意力が散漫になり、物覚えが悪くなったり、皮膚感覚などが鈍くなります。

鼻が詰まったり、酸素濃度がうすくなると、頭がボーっとしますよね。

香料のキツイ所にいると、鼻の感覚も麻痺してきます。

呼吸や鼻、皮膚に関わるところに何らかのトラブルがあると、肺の精気である「魄」が減ってくるのです。


根気強い、落ち着いている、物事をよく考える…などの性格は、それぞれよく使う臓が貯蔵している精気のあらわれであることがあります。

そして、困った性格は、こうした精気の虚から発生していることがあります。

もともとの体質(素因)の特徴と照らし合わせて、性格や行動をみることで、どこに弱点があるかを見つけていくことができます。


そしてこれらの精気が、各臓にきちんとあることによって人間は正常に活動することができるのです。


東洋医学は心身一如。

こころも身体も一つにつながっていて、切っても切り離せないのです。


次回は、すでに度々出てきていますが、臓腑についてお話いたします。

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