人体のしくみ―水の臓腑
自然界では、金鉱のある所に水脈もあり、金属が冷えるとそこに水滴が付き、水は木に吸い上げられます。
火の勢いを消し、土によって流れをせき止められます。
水の性質を自然界に当てはめると、
方角は…北
季節は…冬
季節に特徴的な働きは…貯蔵する
気候は…寒
時間は…夜半(夜中の23時から1時頃)
陰中の陰
水の性質を人体に当てはめると、
臓は…腎
腑は…膀胱
関係する精神活動は…精・志
腎精が充実していると志もしっかりするが、虚すと飽きっぽくなります。
関係の深い感情は…恐・驚
関係の深い部位は…骨・髄
骨の中にうるおいがなくなるともろくなります。歯は骨の余り、もろくなり抜けやすくなります。
開竅しているのは…耳と二陰
腎が虚すと虚熱が発生してのぼせるので耳鳴りがします。または老化現象です。水分の調節ができなくなるので、尿や大便の症状が出ます。二陰とは、尿・大便の出口を意味しています。
働きを反映している部位は…髪
津液が減ってくると虚熱が発生し、昇って髪が抜けます。精が不足すると冷えて白髪となります。
病気の時に出る色は…黒
病気の時にする臭いは…腐
水の腐った臭い。
使い方に注意の必要な味…鹹
しおからい。みずみずしいものを、しんなりさせて、水分を出させてゆるめるという働きがあります。水を引きよせ温める働きをもちますが、摂り過ぎれば津液で固まっている腎がしんなりしてしまうため、血病になります。
病気の時に出る声は…呻
病気の時の声の高さは→羽ラ(ハ行、マ行の唇音)
病気を反映する体液は→唾
ムチン粘々して粘膜を守る体液です。歯の生えている所から湧き出ます。
関係の深い働きは…液
働きが失調したときに現れる病変は…慄
病因となる生活習慣…久立
寒いところに長時間立ちっぱなしだと、足腰が疲労して、腎を傷つけます。
腎精が充実していれば動作も力強く、精神は充ち、筋骨が強くなって、病気もせずに根気がいる細かい作業をやり抜く力もわいてくるため、 腎は、作強の官、細かい作業をする役職に例えられます。
膀胱は津液(小便)の集まる所で、その排泄は命門の陽気や肺気によってなされるため、中洲の見張り番、州都の官に例えられます。
「封蔵の本」 「先天の本」
父母から受け継いだ先天の精は腎に内蔵されています。
「精を蔵す」
先天の精は後天の精(生まれた後に、食べたり飲んだりしたものから作られる精)により補充され、腎に蔵され、腎の働きにより活性化されて元気となります。
「津液を主る」
腎は水臓、津液が多い。全身の水分代謝を調節し、この津液が肝が蔵する血をうるおします。肺が全身に津液を散布し、腎が不要になった津液を集めて処理します。
閉蔵…静かに沈み、消極的気になる
水と木火土金との関係
「金は水を生ず」
金属が冷えると水滴が付きます。
呼吸は肺が行ない、納気は腎が行います。
肺はうるおいを上からシャワーのように振りかけて、洗い流し、清潔にし、腎はそれを集めて必要なものと不要なものとに分けます。
肺が行なった呼吸を、腎が納めるという関係になります。
「水は木を生ず」
水は木を養います。
肝が蔵している血は腎のうるおいに依存しています。腎精が減ると肝血不足をきたし、肝血が不足すれば腎精も減ることになります。なので、汗をかき過ぎると血も消耗します。
肝腎二臓は、一方が盛んになるともう一方も盛んになり、一方が衰えるともう一方も衰え、運命共同体であると言えます。肝腎同源。
「水は火を剋す」
水は火の勢いを鎮めます。
腎は陰気と津液の多い臓。この陰気が水とともに固まっていると腎はしっかりしていることになります。一方、心は常に活動していて陽気の多い臓です。
腎は水だけでは働けず、そこに心から得た陽気が加わって始めて腎としての働きが発揮できます。腎は常に心の陽気を必要としているのです。
心は胸にあって、陽に属し、腎は下腹部にあって、陰に属しています。心の陽気は下降して、腎を温めます。これを命門の陽気といい、人が生きていく上での種火となります。
腎の陰は、心に上昇してうるおし、炎上し過ぎるのを調節しています。
腎と心は相互に昇降し、協調し合って動的平衡を保っています。
「水は土に剋される」
水の流れは土によって堰き止められます。
腎から取り上げた津液と陽気で、脾は胃腸を働かせて飲食物から気血津液を生成させています。
脾は「後天の本」、腎は「先天の本」。先天不足になると後天に影響が及び、後天不足では先天が消耗していきます。臨床上この二臓は、不足すなわち虚弱の傾向になることが多いです。
胃がかまどに置かれた鍋ならば、腎陽=命門の陽気はかまどの種火。脾が飲食物を煮炊きして消化吸収するためには、腎陽が充実していることが必要で、脾が充足していれば栄養や水分を十分吸収することができます。
お互いの持っている気を吸い取りながら働いている関係にあるのです。
五行にもとづいた人体のしくみはこれで終わりです。
次回、もう少し人体のしくみについてまとめていきましょう。
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