人体のしくみ―金の臓腑

土は金を生みます。今回は金の臓腑について。


自然界では、金は土が固まってできたもの、冷やされた金属に水滴が付くことで水を作ります。

金属の斧によって木は切り倒され、火によって金は溶かされます。


金の性質を自然界に当てはめると、

方角は…西

季節は…秋

季節に特徴的な働きは…収(収める)

気候は…燥

時間は…日入(日が沈む17時から19時頃)


陰中の陽


金の性質を人体に当てはめると、

臓は…肺

腑は…大腸

関係する精神活動は…魄気 

 屍体の白骨を意味することから陰性の沈抑しやすい気で、本能的行為、習慣、痛みやかゆみなどの感覚、注意を集中させるものを指します。痒みによって注意力散漫になるのは肺の気が虚したためと考えます。

関係の深い感情は…憂・悲

 悲しみすぎると肺気が弱まり、意気消沈するようになります。

関係の深い部位は…皮毛

 皮毛に気とうるおいを巡らせることにより、外界の環境の変化に対応できます。

開竅しているのは…鼻

 肺は鼻を通して清気を取り入れ、濁気を排出しています。

働きを反映している部位は…毛

 うぶ毛。適度に伸びて皮膚を守っています。

病気の時に出る色は…白

病気の時にする臭いは…腥

 なまぐさい臭い。喀血をした時などに臭う、血生臭い臭いのことです。

使い方に注意の必要な味…辛

 冬に向けて体を温める働きをもちますが、発散させる作用が強いため、摂り過ぎれば気病になります。

病気の時に出る声は…哭

病気の時の声の高さは…商レ(サ行の歯音)

病気を反映する体液は…涕

 鼻を潤し異物侵入を防ぎます。肺が冷えると鼻汁が流れ、熱をもつと黄色く粘り、乾燥すると粘膜が乾きます。

関係の深い働きは…声

働きが失調したときに現れる病変は…欬

病因となる生活習慣…久臥

 横になって寝てばかりいると、気の巡りが悪くなり、肺の働きが悪くなります。


 肺は君主である心とともに上焦にあり、心のポンプ作用で血を巡らせるには肺の気と、肺が管理しているうるおいが必要となります。肺は心とともに気血を全身に巡らせる役割をしているため、君主に仕えて、管理や調節をする「相傅(そうふ)の官」と言う役人に例えられます。

大腸は、小腸から送られてきた食べかすやゴミを糞便に変化させ、伝導して、肛門から排泄しています。


「気を主る」

肺は、呼吸によって天から得た陽性の清気と、脾の消化吸収作用から得た陰性の気を結合させ、宗気を作る働きをしています。

そこから陽性の気は肺によって全身をめぐり、営気は血となって脈中をめぐって栄養となります。

また体内の濁気を出して、天の清気を取り入れ、絶えず清濁の交換が行われている場所でもあります。

「百脈を朝める(あつめる)」

全身の経脈は肺に集まるという意味です。

全身の血と脈は心が統括していますが、血は肺がつかさどる「気の押し流す働き」によってめぐっています。

「水道通調」「水の上源」

脾が飲食物を消化吸収して作るうるおいは、肺の機能により全身に降りめぐらされ、その一部は汗となって体外に排泄されます。

一方、不必要なうるおいは肺の引き降ろす機能により膀胱へ送られ、腎と膀胱の作用により尿となって体外へ排泄されます。これは、急須の蓋に開いている穴をイメージしてもらうとわかりやすいです。

「宣発(せんぱつ)・粛降(しゅくこう)を主る」

宣発とは昇発と発散のことで、呼吸により濁気を吐き出したり、津液と気を全身に散布したり、毛穴の開け閉めを調節することです。

粛降とは粛浄と下降のことで、呼吸により精気を吸込んだり、津液を腎・膀胱へ輸送したり、気道を清潔にすることです。


金と水木火土との関係

「土は金を生ず」

土は地中の奥で固まって金属となります。

肺は気を主り、脾は気を補充します。

肺は呼吸によって自然界の清気を吸入し、脾は飲食物から取り出した精気を肺に送り、肺と脾が共同して宗気を作っています。

脾の機能が失調すると水湿の運化がよくいかなくなり、余分な水分が停滞して痰飲を生じ、肺の宣降作用に影響を及ぼして咳喘が発生します。病は肺にありますが、その根本は脾にあります。したがって「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」といわれます。


「金は水を生ず」

金が冷えると水滴が付きます。

肺は気を主り、粛降を主り、水道を通調する水の上源。

腎は納気を主り、水液代謝を統括する水の蔵。

呼吸は肺が行っていますが、人体が呼吸を行うには腎の気を納める力が必要となります。特に吸気は腎の精気が充足して初めて深く吸込むことができるのです。

腎の精気が不足すると納気が不十分となり、慢性的な肺気虚となり、喘息がおこり、動くと症状が激しくなります。

肺はうるおいを上からシャワーのように振りかけて、洗い流し、清潔にし、腎はそれを集めて気化させます。

どちらも失調すると水液代謝に著しい障害が起こり、咳が激しく横になれない、水腫といった症状が現れます。

肺腎のうるおい(陰)は相互に滋養しあっています。肺陰虚は腎陰に、腎陰虚は肺陰に影響し、肺腎陰虚となりやすく、 空咳、むせかえるような咳、喉の乾き、カサカサしたアトピー、湿疹、めまい、耳鳴り、腰膝酸軟、潮熱、五心煩熱、盗汗という症状が現れます。 


「金は木を剋す」

木は金属製の斧によって切り倒されます。

肝は血を蔵し、肺は気を循環させます。

肺気が循環することによって血が動き、体を栄養できるのですが、肺気が循環すればするほど肝の血は消耗します。(肺は肝を剋す)

肺は気を主りその性質は粛降であり、肝は血を蔵しその性質は昇発です。

肺と肝の関係は、人体の気を推し広げたり、引き降ろしたりすることです。

肺は全身の気の調節を主り、肝は全身の血の調節を行っています。

肺の全身の気の調節機能は血によって栄養をもらうことで行われ、肝の全身にわたる血液輸送は肺の気が押し流してくれることに依存しています。


「金は火に剋される」

火は金属を溶かします。

血は単独では循環できず気が必要となります。その気を循環させるのが肺気です。

また心の陽気を肺気で循環させないと胸に熱が多くなりすぎます。(心は肺を剋す)

心肺とも上焦に位置し、心は血を主り、肺は気を主っており、両者は気と血の関係です。

もし血があって気の推動がなかったら、血は凝固して巡らなくなり、淤血となってしまいます。

もし気があって血がなかったら、気は乗り物がなくなって、散り散りバラバラに拡散してしまいます。

したがって「気は血の帥となす」、「気は血の母」、「気行れば血行る」、「気滞れば血滞る(熱が出て肺を傷つける)」などといわれている。  

人体のしくみが終わった頃にもう一度この表を見ると、わかりやすいかと思います。 

次回は水の臓腑についてです。

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