基礎理論ー気の種類と作用

あらゆるものが気からでき、昇降出入することで生命活動が成り立っています。

ここからは人間の身体の中や周りに関わっている気の話になります。

では、その気の種類と作用について見ていきましょう。


人間の生命活動に必要な気の種類には、元気、宗気、営気、衛気、真気、臓器、経気、胃気があります。


元気(げんき)とは、

「原気」「真気」とも言い、 最も重要で基本的な気で、生命活動の原動力です。

父母からもらった「先天の精」と呼ばれる生命力を基礎とし、胃腸で消化吸収した飲食物(水穀の精微)から取り出された「後天の気」と呼ばれる栄養によって補充されます。

おへその下にある臍下丹田に集まり、必要に応じて変化をさせて、全身に分布されます。

働きとしては、

・成長と発育をすすめる。 

・全身を元気にして働かせる。 

・元気が充分だと、病気になりにくい。 

・元気が不足すると、病気になりやすい。 

ということがあげられます。


宗気(そうき)とは、

「胸中の気」とも言い、宗気が集まっている胸を「気海」と言います。

肺に吸収された「清気」と呼ばれる主に酸素と、飲食物から取り出された「後天の気」が合わさって、胸中の膻中(だんちゅう)と呼ばれる場所に集まります。

横隔膜より上の部分に関係が深く、肺の呼吸機能と心臓の運動を推動する機能を支えています。 

働きとしては、

・呼吸を行う。=宗気の盛衰は話し声や呼吸の強弱に表れます。 

・気血の運行を助ける。  


営気(えいき)とは、

胃腸で消化吸収された水穀の精微から得られる、その中でも特に栄養豊かな部分から作られます。 

血餅の中に入っているものとイメージするとよいです。血液を注射で抜いて放置しておくと下に沈殿してくるベタベタの血の塊のようなものです。

1日に人体を50周巡り全身に栄養を供給しています。 

働きとしては、

・各臓腑、経絡の生理活動に必要な栄養分。  


衛気(えき)とは、

胃腸で消化吸収された水穀の精微から得られる陽性の気。 

動きが早く、脈の外を巡り、昼間に人体の体表部を25周、夜間に人体の内部を25周します。 

働きとしては、

・ウイルスや細菌、寒さや湿気などを体内に入らないよう守る。

・汗腺を開閉し体温調節をしたり皮毛を潤す。 

・臓腑を温める。 


営気は陰性の気で「営陰」と呼ばれ、衛気は陽性の気で「衛陽」と呼ばれ、対にされることが多いです。 

営は脈の中を、衛は脈の外を巡り、両者が協調することで、正常な体温が保たれ、昼は活動、夜は睡眠のリズムが保たれます。このバランスが崩れると寒気がし、外邪が侵入します。(傷寒論)

 

真気(しんき)とは、

正気です。先天の気と後天の気。人体の正常な活動を支える気の総称です。

 

臓気(ぞうき)とは、

五臓に収まり、蔵の働きを支える気です。

五臓の働きはおいおい書いていきます。

 

経気(けいき)とは、

経絡中を巡って、その経絡の働きを支える気です。

経絡治療は主にこの経気の流れを整えることを目標に治療しています。

 

胃気(いき)とは、

胃を働かせる気のことです。胃の働きによって得られた後天の気ともいいます。

病気になっても胃の気があれば、予後は良いとみますが、胃の気がない場合は予後不良とみます。

胃を働かせて栄養を吸収し、生命活動を支えるエネルギーを補うために必要となる気です。


これらの気には、以下のような作用があります。  


推動作用(すいどうさよう)

動かす働きです。

人の成長や発育、一切の生理的活動および新陳代謝をする働きです。  


温煦作用(おんくさよう)

温める働きです。

体を温め体温を保持する働きです。

衛気、原気、腎気と深く関係しています。 

体が気を作れなくなると、温めるエネルギーがなくなるために寒くなります。


防御作用(ぼうぎょさよう)

守る働きです。

体表において外邪の侵入を防御する働きです。つまり、病気に対する抵抗力です。

衛気と深く関係しています。 

疲れた時に風邪をひきやすいのは、気の働きの低下により体を守る力がなくなってウイルスに負けるためです。


固摂作用(こせつさよう)

留める働きです。

血液や体液が漏れるのを防ぐ働きです。

血液が血管の外に漏れたり、汗や尿の出過ぎを防ぎます。

営気、衛気、脾気、腎気と深く関係しています。

疲れている時に、さほど暑くもないのにダラダラ汗が流れる時があれば、それは気が留める力を失って、汗が出ているのかもしれません。他に、月経でもないのに出血がある、月経がダラダラ続くのも固摂作用の低下が考えられます。


気化作用(きかさよう)

化かす働きです。

豚肉を食べても、豚のお肉がそのまま人の筋肉や脂肪組織にはなりません。お茶を飲んでも、お小水としてお茶がそのまま出てくるわけではありません。

精が気に、気が津液や血に、津液が汗や尿に…体に取り入れたものを必要なものに、老廃物を排出できる形に変える働きのことです。

営気、衛気、宗気、脾気、肺気、腎気と深く関わります。

コラーゲンを食べてもお肌がプルプルにならないのは、身体の中でプルプルお肌に変化させる力がなくなっていると考えられます。


さまざまな種類の気が、身体の内外で動かし、温め、守り、留め、化かしているからこそ、人の体は健やかに生きていくことができるのです。


逆に、これらの気が、動かなくなり、冷たくなり、ウイルスや細菌に感染し、散ってしまって、修復もできないような状態になると…、死んでしまいますよね。


個別に気の種類と作用を見ていくとイメージしにくいかもしれませんが、全体像をざっくりいうと、実は当たり前のことしか言っていない、ということが東洋医学には多々あります。

難しく考えずに、次回は全てのものを陰陽に分けて考えてみましょう。


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