基礎理論ー陰陽学説

陰と陽は、日が当たるか当たらないかということから発生した考え方です。
『陰』という字は、山の日が当たらない部分を表しています。
『陽』という字は、山の日が当たる部分を表しています。
農耕民族にとっては、日が当たり水があるかどうかは重要な問題です。


また、『陰と陽』の代わりに『雌と雄』が用いられることもあり、2つの対立したものが合わさって、そこから新しい生命が生み出されることから、万物が形となって現れる状態には、相反する2つの面があると考えたのです。

天地万物の生成は「気」が生まれたことにより始まります。 
宇宙が始まった頃、混沌とした広がりの中から気が生じ、分化し、清くて軽いものは陽気隣天に昇り、重くて濁ったものは陰気となって地に下りました。
天の気と地の気、陰陽2つの気から四季が生じ、さらにそれによって人や物などを含む万物が生じたというお話は『気の思想』のところで書きました。
すべては陰と陽から生まれ、陰と陽に分類することができると考えたのが、陰陽学説です。

では、陰陽の性質を説明していきたいと思います。
ざっくりでもいいので、この考え方を頭の片隅に入れておかないと、これからどんどん東洋医学の話を進めていってもさっぱりわからない、ということになってしまいます。

ちなみに下に陰陽の例を挙げましたが、左が陽、右がそれに対応している陰です。
上ー下
左ー右
表ー裏
外ー内
末端ー中心
昇ー降
浮ー沈
昼ー夜
夏ー冬
春ー秋
火ー水
明―暗
男ー女
幼ー老
背ー腹
胸ー腹
腑ー臓 
気ー血
衛気ー営気
津ー液
乾燥ー湿潤
亢進ー衰退
熱ー寒
急性ー慢性
開くー閉じる
発散ー収斂
出るー入る
気ー形


陰陽の相対性

陰陽の属性は絶対的なものではなく相対的なものです。

ある物事が、陰と陽のどちらに属するかは、何と何を比べるかによってきまります。

日なたが陽であれば、日影が陰。

熱いものが陽であれば、冷たいものは陰。

上がれば陽、下がれば陰。

昼が陽なら、夜は陰。

表が陽なら、裏は陰。

そして対照とするものによって陰にも陽にもなります。

男が陽なら、女は陰なのですが、同じ女性でも比べる相手が子どもと大人では変わります。

大人が陰なら、子どもは陽となります。

比較する相手によって、陰陽は変わるということを押さえておいてくださいね。


 陰陽の可分性

物事はどこまでも無限に陰と陽に分けることができます。

たとえば、「昼が陽なら、夜は陰」と書きましたが、昼間でも午前中は陽で、午後は陰、となります。

上がれば陽、下がれば陰、ですが、上がっている場所が日なたであれば陽、日陰であれば陰となります。

表と裏では、裏は陰となりますが、裏でも冷たい所は陰、暖かい所は陽となります。

この裏の冷たい所を『陰中の陰』、裏の温かい所を『陰中の陽』と言いますが、そこまで覚える必要は今のところありません。

物事を陰と陽に分けても、またさらにそこから陰と陽に分けることができるということを押さえてください。


 陰陽の対立と制約

陰と陽は互いに相反する性質を持ち、互いの過剰を抑制し合う関係にあります。

日なたがあるからポカポカ温かいですが、日なたばかりで日陰がなければ暑すぎて砂漠になってしまいますね。

昼間の時間しかなく、夜が来なかったら、休みにくくなってしまいますね。

活動ばかりしていたら疲れて倒れてしまいます。休息も必要です。

日なたと日陰、昼と夜、活動と休息…お互い相反するものですが、バランスを取るために必要です。

陰陽は物事のバランスを考える時に必要となる考え方です。


陰陽互根

陰陽は互いに依存しあっています。

一方があるから他方がある。

相手がいなければ自分もいない。

表があるから裏がある、上があるから下がある。 

掃除機があって、電気があって初めてゴミが吸える。 

津液があって、気が巡っているから汗が出せる。

ちょっと東洋医学的な話も混ぜてみました。

日本人は「陽」をいいもの、「陰」をよくないものとイメージしがちですが、東洋医学では両方大切なものです。  


陰陽の消長と平衡

気は陰陽に分かれても、絶えず変化しバランスをとり合っています。

物事の部分や瞬間を切り取って見ると陰陽は量的に偏っていますが、変化しながら平衡を保っているため、全体としてみるとバランスがとれています。 

朝、お日様が昇っても急激に熱くなることはありませんね。夜、日が沈んでも急激に寒くなることはありません。人間が生きていけないほどの高温や低温に切り替わるということはありません。

寒い雪の降る季節が来ても、いずれ気温が上がって来て雪解けの季節となります。

部分部分でみれば、今は熱い!今日は寒い!ということになりますが、徐々に気温が変化したり、季節が移り変わっていきますね。

日中いきなりアグレッシブに活動しているように見えても、朝目を覚まして徐々に体を動かしていきます。

疲れすぎればバタッ寝てしまうこともあるかもしれませんが、たいていの人は寝る前に準備をしますね。

部分的に陰陽のバランスを切り取ってみると「対立と制約」となります。しかし陰陽は静止した不変の状態ではなく、性質が常に変化しています。これを「消長と平衡」といいます。

性質が常に変化し続けることによって、長い目で見るとバランスがとれているという状態のことです。


陰陽転化

陰が極まると陽へ、陽が極まると陰へ変化します。

日が昇りきれば沈む。

夏至を過ぎれば日が短くなってくる。

日がずーっと昇っていることも、夏至を過ぎたのに日中の時間が長くなり続けることもありませんね。

人間がずーっと活動し続けることもありません。交感神経がピークになり、疲れてくると副交感神経が優位になってきて体は休みます。

どこまでもどこまでも陽の分量が増え続けることも、どこまでもどこまでも陰の分量が増え続けることもありません。

一定量を超えると必ず陽は陰へ、陰は陽へ変化するようになっているのです。


しかし、陰陽がバランスをを失った時、人は病気になり、陰陽がバラバラになってしまうと、人は死ぬ。(陰陽離決)と言われています。


陰陽学説はつまり、バランスを取るための学説なのです。


気と陰陽を何となくでもいいので理解して、そこで東洋医学の話によくでてくる木火土金水の話、つまり五行の話が始められます。

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