病気の原因ー外因(外的要因)

外から受ける病気の原因として、外因があります。外邪(がいじゃ)と言うときもあります。

前回は、体質によってなりやすい病気があるという、素因のお話をしました。

体の調子がよいときは、外邪が侵入してきません。

体質的に弱い部分があると、そこに外邪が侵入しやすく、病気になりやすくなります。

前回の素因をもとに、どのような外邪に気を付けたらよいか、ということを知って予防すると、病気を未然に防ぐことができます。

今回はどのような外因があるのかをお話していきます。


外因=人体を外部から発病させる原因になるもの、外邪です。

風邪、寒邪、暑邪、湿邪、燥邪、火邪の六つの原因からなる六淫(りくいん)と、ウイルスや細菌など感染症の原因となる疫癘(えきれい)があります。


風邪…春に多い邪気ですが、四季を通じて注意が必要です。

陽性の邪気で、体のバリア機能を破って体内に侵入し,次々に移動するという性質があります。

上部を犯しやすいため、体の上部に症状が現われることが多いです。

体のバリア機能が破られるため、寒・湿・燥・熱といった他の邪気を引き連れて侵入してくることが多いです。 

首筋から侵入して寒気やカゼ、頭の中で高血圧や脳卒中、皮膚表面で痒み、筋肉に侵入して痺れや麻痺などを起こします。


 寒邪…冬に多い邪気です。気温が急に下がった時に侵入しやすくなります。また、冬以外でも雨に濡れた時、労働して汗をかいた後は注意が必要です。 

陰性の邪気で、体を温め活動させる陽気を損なう性質があります。

冷えるとギュッと固まる性質があるので、体を巡る気血津液を滞らせる特徴があります。

陽気の温めて巡らせる作用が働かなくなるので、巡らないことによる固定性の痛み(不通則痛)が起こります。 

筋肉や腱、関節などの痛みや痺れ、体が動かない、腹痛、汗が出ない、悪寒発熱などの症状が表れます。


暑…夏に多い邪気です。夏の盛りにだけみられます。 

陽性の強い熱の邪気で、加熱が盛んであるために上昇する性質があります。 

毛穴を広げて汗を多く出すため、気や津液を消耗します。

夏は温度・湿度ともに高いため、しばしば湿邪をともないます。そのため湿の停滞の症状が現われます。 

代表的な症状は熱中しょうですね。


湿…夏と秋をつなぐ長夏に多い邪気です。湿気の多い気候や、雨に濡れたり長い間湿ったところにいると侵入しやすく、脾の消化吸収機能に影響を及ぼします。

陰性の邪気で、脾胃を働かせる陽気を損傷しやす性質があります。また、体のあちこちで気の巡りを停滞させる性質もあります。 

陽気の流れを悪くさせ、不要な水分を排泄する能力も落ちるため、重だるくなります。

水の流れのように下へ向かう性質があるため、人体の下部を起こすことが多いです。 

夏バテ、食欲不振、胸焼け、下痢、軟便、むくみ、四肢のだるさ、頭痛、湿疹などの症状が表れます。寒邪や風邪と合わさってリウマチなどの関節炎を起こす邪気でもあります。


燥…秋に多い邪気です。口や鼻から入って肺を犯すという特徴があります。温燥と涼燥の2種類に分けられます。 

乾燥性があり、人体の津液を消耗させやすい性質があります。 

肺はデリケートな臓で、潤いを喜び、燥を悪むという特徴があります。燥邪の多くは口や鼻から入り、真っ先に肺に向かうため肺を侵しやすいのです。 

喉や鼻の炎症、皮膚の乾燥、便秘など、乾燥による症状に関わってくる邪気です。


火…陽が盛んになると多くなる邪気です。暑邪は外気からのものが多く、火邪は体の内側から発生することが多いです。また、風・寒・湿・燥などの外邪が長期にわたって体内にあると、これらが変化して火になることもあります。情緒(喜・怒・思・悲・恐・など)が過剰になると火が生じることもあります。 

炎上して、慌ただしく動き、上へ向かう特徴があります。 

人体の津液を最も消耗し、元気も消耗させる性質があります。  

肝のうるおいを消耗させ、筋が滋養されなくなると、体の中で風が巻き起こります。これが筋肉のひきつりや、血管に作用して脳卒中などを引き起こします。  

深く血分に入り、一定の局所に集まると化膿性疾患や瘡瘍がおこり、腫瘍を形成しやすくなります。


疫癘(えきれい)…  強力な伝染性と流行性を持った外来の発病因子を、疫癘といいます。

インフルエンザやノロウイルスなど、季節的に流行する感染症の原因ウイルスや細菌などは、これにあたります。

インフルエンザが流行すると、予防接種を受けていても感染する人と、予防接種を受けていなくても感染せず、風邪すらもひかない人といますね。

それは、持って生まれた素因、もしくは外邪を寄せ付けない生活の違いによるものです。

日本は四季の変化が大きい気候でもあります。そのため、季節によって増える邪気も大いに変化します。

年がら年中同じ養生をするのではなく、季節に合った過ごし方をすることも大切です。


東洋医学はこころと体のバランスも大切に考える医学。

次回は、感情による心身の影響のお話です。

ママのための東洋医学講座

ちまたにあふれている健康情報に振り回されることなく、家族の健康を守りたい方のために。