人体のしくみ―土の臓腑

火は土を生みます。今回は土の臓腑について。


自然界では、火の燃えた後の灰が土になり、土が深いところで固まって金となります。 


土の性質を自然界に当てはめると、

方角は…中央

季節は…長夏

季節に特徴的な働きは…化(化かす)

気候は…湿

時間は…日西(日が西に傾き始める14時から16時頃)


陽中の陰


土の性質を人体に当てはめると、

臓は…脾

腑は…胃

関係する精神活動は…意・智 

 意は単純な記憶や思考を含んだ心を指し、智は熟慮したうえで最善の判断を下す心を指します。

 人は意智によって様々なアイディアを出すので、何かを作り出そうとすることです。

関係の深い感情は…思

 思い悩み、考え過ぎると脾の働きが停滞し、気が固まってしまいます。

関係の深い部位は…肌肉

 脾胃から得られる気血津液によって作られ、脾胃の状態が如実に現われる部位です。脾胃が虚すと締まりがなく軟弱な肌肉となります。

開竅しているのは…口

 後天の精が充分に作られると、五味を判別することができます。

働きを反映している部位は…唇

 脾の気が不足すると変化が現われるのも口唇です。

病気の時に出る色は…黄

 脾の病気の時は特に口の周りや鼻が黄色くなります。

病気の時にする臭いは…香

 香ばしい食べ物の匂いです。

使い方に注意の必要な味→甘

 体を緩めて脾を養いますが、湿がたまりやすい性質をもちます。摂り過ぎれば肉病になります。

病気の時に出る声は…歌

病気の時の声の高さは…宮ド(ア行ヤ行ワ行の喉音)

病気を反映する体液は…涎

 アミラーゼ。消化酵素食べ物を運ぶためのよだれです。

関係の深い働きは…味 

働きが失調したときに現れる病変は…噦 しゃっくり。

病因となる生活習慣…久坐

 座りっぱなしは、筋力が落ちて肌肉がたるみ肥満の元となると同時に、脾胃の働きを鈍らせます。

と、なります。


脾胃は飲食物を消化し、体に必要な気血津液の材料を取り出し、補充するため、「倉廩の官」と例えられます。倉廩(そうりん)とは穀物を蓄えておく倉のことで、脾の働きによって酸・苦・甘・辛・鹹の五味が生じて、それぞれ五臓に流れていきます。脾胃が働かなければ、各臓腑に必要な材料が作られません。  


「営を蔵し、後天の本となる」

飲食物を消化や吸収することで営気を作り、さらにこれを肺へ送り、気・血・津液に変化して、全身に送り出します。


「気血生化の源」

飲食物から取り出した水穀の精から後天の精を取り出すことによって、精・気・血などの人体の生命活動に不可欠な物質を化生するための原材料を提供しています。


「運化を主る」

飲食物を消化して、後天の精を吸収して、全身に送り出す元であることを指します。運化が上手くいかないと、消化・吸収の異常や営気の巡りの異常、あるいは津液の停滞などが起こり、さまざまな症状を呈します。


「昇清を主る」

吸収した水穀の精を胃から上の肺へ送ることです。気や血を上に昇らせ、臓腑・器官が下がらないようにつなぎとめることを意味しています。昇清が上手く行えないと、内臓下垂や全身倦怠感、慢性の下痢などが起こります。


「統血を主る」

営気が、血と共に脈中を巡ることによって、血が脈外に漏れることを防ぎ、全身に栄養を与えて活力の素になります。


土と木火金水との関係

「火は土を生ず」

火が燃えた後の灰が土になります。

心は血をつかさどり、脾は血を作って漏れないようにしています。どちらも血と関係があります。

血液は、脾が飲食物を消化吸収して体に必要なもに変化させる働きによって作られます。そのため、脾の気が足りないと、血が不足したり、血が脈外へ漏れ出るようになります。


「土は金を生ず」

 土は地中の奥で固まって金属になります。

肺は呼吸によって自然界の清気を吸入し、脾は消化吸収の働きによって飲食物から作った精気を肺に送り、肺と脾が協同して宗気を作っています。肺が呼吸できるのは、脾が呼吸するためのエネルギーを肺に送っているからなのです。

そして、脾は水分を吸収し、肺はその水分を体に散布しています。脾と肺は共同して水分代謝を行っているのです。脾の機能が失調すると、水湿が停滞して痰飲を生じ、肺に影響を及ぼして咳喘が発生します。病は肺にありますが、その根本は脾にあります。それが「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」といわれる所以です。


「土は水を剋す」

水の流れは土によってせき止められます。

脾は心から受けた陽気と腎から取り上げた津液で、胃腸を働かせて気血津液を生成させています。

脾は「後天の本」、腎は「先天の本」といわれ、先天不足になると後天に影響が及び、後天不足では先天がどんどん消耗していきます。臨床上この脾と腎は、虚弱の傾向になることが多いです。

脾が飲食物を消化吸収する働きは、腎の陽気に依存しており、腎陽が充実していれば脾の消化吸収機能もすこやかであり、脾陽が充足しておれば水穀の精微や水湿を十分必要なものに変化させることができます。食べものを煮炊きするときに、脾がかまどで、腎陽がかまどの種火となります。

腎陽が不足すれば、脾の消化吸収して変化させる働きがうまくいかなくなります。脾の消化吸収機能が失調すると、腎陽の働きを活発にする燃料がなくなり、腎虚となります。


「土は木に剋される」

木は土の養分を吸い取って成長します。

脾で作られた血(営気)は肝に貯蔵されます。肝は血を必要な時に必要なところへ分配できるよう、脾から取り上げて貯蔵しておきます。

肝が血を伸び伸びと分配している状態では、脾の消化吸収機能も正常に発揮されます。

肝の貯蔵している血は、脾の消化吸収して変化させる能力に頼っており、脾の働きが悪くなると、肝もうまく血を分配できなくなったり血不足を起こします。

人体のしくみが終わった頃にもう一度この表を見ると、わかりやすいかと思います。 

次回は金の臓腑についてです。

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