基礎理論ー東洋医学の起源①

なぜ、東洋医学ができたのか。

その歴史を振り返ってみましょう。


人類は約400万年~200万年前にアフリカで誕生したと言われています。

二足歩行をし脳が発達し、言語や道具を使うようになります。


脳が発達してくると、病気やケガをした時の治療法をあれこれ考え始めます。

東西どちらの文化圏でも、最初は痛いところをさすったり、温めたりする本能的な医術、手当てでした。


中国が他と違っていたのは、痛むところに石を用いて治療したことです。


その後、部族社会が形成されるにつれてシャーマンなどの呪術師による呪術的な医療が行われるようになりました。

これは、中国では殷の時代(紀元前1600年頃~紀元前1046年)の甲骨文字に推測されます。

周を経て、春秋戦国時代(紀元前770年~紀元前221年)になっても、祭祀、祈祷、祝詞などによって病気を取り除こうとする療法が盛んに行われていました。

この春秋戦国時代という混乱の時代を背景に多くの学者が誕生し、思想が深まっていきます。

多くの思想が現れることにより、このあと東洋医学の基礎となる気の思想や陰陽、五行といった考え方が誕生してくるのです。


当初の原始的な手当てはやがて、

なでさする⇒導引(どういん)・按矯(あんきょう)といったマッサージ的なもの

薬になるような食物を摂取する⇒湯液(とうえき)と呼ばれる、いわゆる漢方薬のようなもの

が、発展してきます。

これが思想と合わさって、東洋医学として発展していきます。



では、西洋医学はどのように発展したのでしょうか。


西洋医学は欧米において発展した医学を指す用語です。明治初期から、欧米医学を指す言葉として用いられました。正式な医学用語ではなく、俗語であり、文脈によって意味が異なります。(ここでは主に欧米で発展した現代医学を指して使用しています。)


ヨーロッパにも概念・理論・治療体系をもつ伝統医学(ギリシャ・アラビア医学、ユナニ医学)があります。

古代ギリシャに始まり、四体液説・プネウマ論などを基礎とし、東洋医学と同じように全体観・整体感の医学です。

ヨーロッパの伝統医学は交流しながら発展しました。

西洋医学は、古代から現代までの西洋の医学を指す場合もありますが、ルネッサンスに端を発し、その後自然科学と結合し19世紀後半に発展した現代医学を指すことが多いです。


西洋でのアロマテラピーの歴史を学んでいると、一般的に言われている西洋医学という現代医学よりは、思想をもとに身体全体を見る東洋医学的なものを感じることが多いです。


アルプス山脈のエッツ渓谷で見つかった5300年前のミイラ化した遺体(アイスマン)からはツボ療法をやっていたとみられる形跡が見つかっています。

古代エジプトやギリシャ、ローマなどの遺跡などから発見されたものの中からは、植物療法が行われていた形跡が多いようです。


紀元前3000年頃、エジプトでミイラが作られていた時代、神様を祭る神殿ではお香を焚いたり、お湯やオリーブオイルなどに植物を漬け込んで、ハーブティーやハーブオイルなどが使われていました。

病気は悪魔の仕業、といわれていた時代です。

魔除けとして使われていたのでしょうが、殺菌や虫除けなどの働きがある植物を本能的に選んで病気を予防していたと思われます。


その後、紀元前460~紀元前377年に「医学の父」と呼ばれる医学者、ヒポクラテスが登場し、それまで主流だった呪術的な手法を退けて、病気を科学的にとらえ西洋医学の基礎を築きます。

ヒポクラテスはマッサージの重要性を説き、医療や健康作りに用いたと言われます。

西洋医学の基礎を築いたとは言いますが、中国の導引・按矯と似ていますね。


その後、ギリシャの医学者、ガレノス(129年頃 ~ 200年頃)により、アリストテレスの哲学を踏まえ、臨床医としての経験と多くの解剖によって、それまでの医療知識をまとめ、学問としての医学が確立されたと言われています。

ガレノスの学説はその後ルネサンスまでの1500年以上にわたり、ヨーロッパの医学において支配的なものとなりました。


しかし、中世ヨーロッパ(500年頃~1500年頃)では、外科はキリスト教徒の職業とはみなされていませんでした。

病気は神の恵みであり、医療は神への冒涜とされていました。

当時は理容師によって外科手術やまじない的な瀉血治療などが行われていて、これは学術的な医学が発達するまで広く行われていました。その名残として、理髪店には赤と青の線がくるくる回っている看板が付いていますね。あれは動脈と静脈を表しているのです。


このように、ヨーロッパにおいては、ヒポクラテスやガレノスの知識が継承されることなく、学問としての医学は低迷しました。

古代ギリシャの医学知識は、イブン・シーナやイブン・ルシュドに代表される、イスラム世界において継承されました。 (→ユナニ医学、イスラム科学)


ルネッサンス期(1400年頃~1600年頃)のヨーロッパでは、イスラム世界の医学書籍が翻訳され、研究され始めました。

それにつれて、人体に対し実証的研究がはじまり、それまでの医学上の人体知識が徐々に否定されはじめ、近代科学としての医学が芽生え始めました。

このルネサンス期以降、欧米で発展した現代医学的な医学のことを、普段私が使っている『東洋医学』の対比語とする『西洋医学』として使っています。


さて、次回はもう少し、東洋医学の歴史について触れていきましょう。



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